EPISODE　　2022.09.12

アオノツガザクラを見ると思い出す事

2014年の夏、私は北アルプスの縦走途路、美しい池のほとりにある山小屋前で一本立てていた。絶景をバックに写真を撮ってもらいたいと思い、立派なカメラを手にした初老の男性に声をかけると、明るく気さくに

「俺がシャッター切ると高いよ〜！」

と結局ホントにシャッターを押してはくれない。それでも、高山植物の話題で盛り上がって、

「これはアオノツガザクラ。俺が命名したんだよ！」

ホントなのか冗談なのか？近くにいたやはり初老のおじさんが

「この人、青野（アオノ）さんっていって偉〜〜〜い写真家なんだよ！」

と教えてくれた。暫し高山植物の話をして一期一会、そのおじさんとは別れた。

2年後、私は上高地インフォメーションセンター前で「青野恭典写真展」のポスターを目にする。

「あ、あのおじさん？」

中に入ると“青野恭典さんを偲んで”のパネル。青野さんは2016年1月に亡くなったとある。館内には言葉を失うほどの美しい山岳写真が展示されていた。青野さんは日本山岳写真協会副会長。

ホントに偉〜〜〜い山岳写真家だった。