climb creation クライムクリエーション合同会社

YOMO YAMA YAMA

EPISODE  2022.11.11

北穂高岳の母と息子

その女性が75歳だとわかったのは山頂の山小屋だった。

途中、その女性は危険な岩場を40歳位の男性と一緒にアンザイレンで頑張って登っていた。私は安全な場所で二人を抜かして来た。男性は上手にロープワークしていたから、かなりのベテランと思われる。女性の安全を確保し、叱咤激励しながら着実に登っていた。

親子なのかなぁ?あるいはガイド登山なのかなぁ?言葉使いは親子っぽかったなぁ。なんて思っていた。ところが少し先に、二人の事を話してしていた人がいた。

「こんなところにあんな年寄り連れて来る?」

「しかもロープで繋いでモタモタしてるから渋滞しちゃってるじゃない!」

さすがに本人たちに直接言っているわけではないけど、仲間内で話しているのを耳にしてしまって、私は凄く嫌な気持ちになった。

「いいじゃないか!少しくらい遅れたって。着実に安全登山をしているんだから。どうしてそういうこと言うんだろうなぁ」と。そして二人が山頂に上がってきた時に男性に声をかけてみた。

「もしかして親子ですか?」

「はい、母です。2度目のチャレンジなんです。前回は途中で引き返しました。」

「おめでとう、良かったですね!」

周りの人達は皆んな驚きと同時に二人に祝福の言葉をかける。

「よく頑張りましたね~。」

「息子さんと登れるなんて素晴らしいです。」

そんな会話を聞きながら私は泣きそうだった。今もこの文章を打っていて泣きそうだ。(笑

山には色々な感動がある。余談だけど、ヤマハハコ(山母子)という名の高山植物があったなぁ。